ホツレ日記

映画 古長屋 銭湯暮らし

ブラックス・キャンダルを観て

そして誰もいなくなった

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スコット・クーパー監督のブラックスキャンダルを先週観てきました。出演者にジョニー・デップやカンバーバッチ等の名前があるので、それで観に行った人もいるのではないかと思います。実際私が行った映画館では、若い人やカップルも結構いました。とはいっても、上映から1週間程は経っていたので、前評判くらいは出回っていたでしょう。観客は20人程度でガラガラでした。重々しい雰囲気の映画で、エンドクレジットが流れ終わった後に席を出ようと振り返ると、私一人しかいなかった時の気持ちは何ともいえません。


原題は「Black mass」で、黒ミサや黒い集まり、かたまりという意味になります。悪魔崇拝の黒ミサで、悪魔的な存在といえばジョニー・デップ演じるジミーでしょう。彼を崇拝しているのは、ジョエル・エドガードン演じるFBIのジョンです。イタリアンマフィアの情報をジミーからもらう代わりに、FBIはジミーを逮捕しません。ジミーも殺しはしないと約束するのですが・・・。ジミーの弟、カンバーバッチ演じる上院議員のビリーは、兄弟という以外はジミーとジョンとの関わりは殆どありませんでした。


何故ここでちょっとガッカリするというか、思っていたのと違うと感じるのかといえば、日本のポスターを見た時の印象と映画の内容に乖離があるせいだと思います。登場人物がわかりやすくて良いのですが。

ジミー、ジョン、ビリーの3人が大きく出ていてブラックス・キャンダルと書かれていたら、3人の黒い関係が・・・と想像してしまうのですが、実際映画の内容はそうでは無いのです。兄ジミーの犯罪を黙認している時点で同義ということかもしれませんが、ちょっと腑に落ちません。

 

 

この映画、1回しか見ていないので、ちょっと記憶は曖昧ですが1つ気になったことがあります。それは電話の音です。

ジョンのいるFBIの中では電話のベル音が鳴り響いていました。誰か取らないのかっていうくらいに。俗にいう黒電話のあのキンキンする鋭い音がFBIのどのシーンでも鳴っていた印象です。1970-80年代初めのことなので、時代的なものかなと思っていました。

 

主人公のジミーはとても怖い人で、人を全然信用しません。自分を裏切った者には容赦なく制裁を加え、仲間であっても躊躇はありません。些細な秘密をバラしたことで、ジミーの犯罪行為もバラすのではないかと言い詰められ、落ち着いて食事も取れないシーンもありました。冗談だとジミーは笑うのですが、詰められた方は笑えません。顔にも悲壮感が漂っていました。

 


そんなジミーが、社会から身を隠そうとする前に弟ビリーに電話をかけるシーンがあります。そこで鳴る電話の音は、FBIで鳴っていた鋭いベル音ではなく、ちょっとこもったような耳に優しい電子音でした。ジミーは電話で弟に優しい言葉をかけます。体には気を付けろと。兄として、人として当たり前かもしれませんが、弟を初め、肉親にはとても優しいのです。

 

 

とはいっても主人公ジミーは犯罪者なので、一般市民側から観たハッピーエンドはジミーが捕まることであって、ジミー的に観ればバッドエンド的な終わり方を迎えます。観終わった後に胸に残るのは、黒いモヤモヤとしたかたまりでした。これが悪魔崇拝の儀式を観た人の中に宿るものなのかもしれません。